吊り橋が魅せるその景色

以下、中年社員 もこもこ氏の平凡な休日日記より


休日特有の気だるい遅い朝、「まだ間に合うな…」と車のキーをポッケに家を出る

ときおり行ぐのだが車で行ぐのは1年ぶり
謎の故障で放っておいたが、整備士資格を持った同僚に先日修理してもらった愛車は快適に風を切り、真夏のラジオは甲子園を流していた
地元埼玉県代表は残念ながら既に敗退しており隣県代表を応援するのも毎年の事

そうしていると目的地の大型駐車場に到着

車を置いて、そこから幅100メートル程の『水路?』を吊り橋を歩いて渡らないと買えない
吊り橋半ばから気まぐれに片方の水面に目をやると、そこには競技用ボートのエイト?を練習をする大学生くらいの若者達がいた
それは己らの限界を試しているのか、はたまた明日のオリンピックを目先しているのか、いづれにせよそのケレン味のない眼差しは眩しかった

思えば私だって学生の頃は一途にバレーボールと向きあい、彼等と同じ色の汗をながしていたはずだが、
時は流れ、気がつくと、ひたむきさを置き忘れたオジサンになっていた

そんな嫉妬のような苦さをおぼえたとき、背後で唸るモーター音で我に返る

「あ、いかん、買わねーと!」

そう、私のお目当ては人気があっても売れ切れることはないのですが、決められた時間がくると終売してしまうのです
すれ違うオジサマ方を掻き分け無事購入
再び吊り橋に戻ると先程までの感情は微塵もなくなり、もう一方の水面の世界線にかぶりつく

「おげ〜ぃ!やっぱコレよっ!あぁ、的を射た買いもの は楽しいな〜」
と存分に自分を取り戻す

……夕方

いつもの後悔を背負って売り場をあとにする
吊り橋の上でオジサマ方と生産性のない短い会話があったあと、そのオジサマは無料バスへ、私は愛車に乗り込んだ
青春の水面に若人達の姿はもうなかった

「渡るべきではなかったか…」

それは誰が呼んだか『栄光の架橋』
私にとってはホンネとタテマエの境界線上にある吊り橋でしかない… 

「仕方なし、帰り道にスーパーで半額の寿司とビールを買って帰ろう…」

斜陽に向かう愛車のエアコンはぬるい風しか出てこなかった…(悲しい)